レアル・マドリード下部組織（カンテラ）の中井卓大が成長中！ | みんなのサッカー情報掲示板

『9歳の日本人の少年がレアル・マドリードのカンテラに入団』
そんなビッグニュースが流れてから4年ほどの歳月が経つ。当時9歳だった中井卓大（たくひろ）は、遠くスペインの地で着実に成長を遂げ、所属するインファンティールA（U-14）でトップ下のレギュラーを確保している。ゴールとアシストを積み重ね、スペイン紙『AS』では「マドリーの宝」と報じられるほどの活躍をみせている。

同じような時期に、バルセロナのカンテラで技術を磨いた久保建英（現・FC東京U-18）に注目が集まる中、将来の日本代表でこの2人の天才が共演する姿に期待を寄せるファンも多いだろう。中井卓大の情報が日本に入ってくる機会は少ない。そんな中、今回当時のレアルのカンテラコーチで、中井の入団を後押ししたイニアッキベニ氏に”天才少年”の現状を聞くことができた。

イニアッキベニ氏は、レアルのカンテラで2004年から10年間コーチを務めた人物である。今もドバイスポーツシティのサッカースクールのヘッドコーチとして、多くの有望選手を指導している。そんなイニアッキベニ氏にとっても中井卓大は特別な存在のようだ。

「”ピピ”（中井卓大の愛称）は、初めて見た時からとにかく上手すぎました。足元の技術が高く、どんな時でもボールを失わない。ボールを失わないということは、味方が信頼して預けられるということ。これはレアルのカンテラの中でも、非常に優れた個性です」

中井がレアルのカンテラ入団前に在籍していた、滋賀県にあるアズーフットボールクラブ代表の嶌村寿次（しまむら ひさつぐ）氏も、イニアッキベニ氏と同じ印象を中井に対して抱いていた。

「圧倒的な技術を持った子供でしたね。私の中でも”特別な選手”という印象で、特にボールを扱う技術に関しては突出していた。まさかレアル・マドリードのカンテラに入団を果たすまでの選手とは思いませんでしたが、非常に高いポテンシャルを感じました」

レアルのカンテラに入団する際、「若すぎる、早すぎる、前例がない」といった、周囲からの反対の声もあった。だが、中井はそんな雑音を強靭な意思で気にもしなかった。優れた技術を、どのように試合で活かすか。それは、レアルにおいて”優れた選手”を判断する基準となっている。

「いかに技術が優れていても、それを発揮できるメンタルがなければ意味がない。これは重要なポイントです。ピピは、強靭な意志と自分の長所を、しっかりとテストで披露していました。才能だけではなく、成功できるメンタリティも持ちあわせていたということです」（イニアッキベニ氏）

中井卓大はレアルのカンテラ入団以降、スペインの地で慣れない環境に苦しみながらも徐々にチームに適応していった。各カテゴリーで20名ほどの在籍しか許されない世界最高峰のカンテラは、毎年のように半数近い選手が入退団を繰り返す。今もなおその競争に勝ち残っている事実は、中井の実力と成長を証明する上で確かな指標となっている。

イニアッキベニ氏から見た際、中井の最も大きな変化は「もはやスペイン人化した内面」だという。

「入団当初は、スペイン人に交じって戦うには少しハートが弱かったかもしれません。ただ、今は精神的にも肉体的にも逞しくなり、スペイン人よりスペイン人らしいパーソナリティを持っている。世界でトップクラスのレアルというクラブで揉まれているという経験は、ピピの将来にとって必ずいい結果につながると思います」

愛弟子の成長を話しながら表情を緩めたイニアッキベニ氏は、最後に中井の将来についても語った。

「中井のプレースタイルをあえて挙げるとするならば、マンチェスター・シティのダビド・シルバに近いかもしれない。柔らかいボールタッチとキープ力に加えて、的確にスペースを見つける戦術眼とそこに正確にパスを通す技術がある。しかし、ピピはピピでオリジナルな選手。誰かと比較して、こんな選手を目指してほしいということはありません。彼なりの目標を持って、しっかり成長していってほしいです」

U-20W杯やJリーグで元バルサカンテラの久保建英が強烈なインパクトを残しているように、突出した才能は年齢の枠を超えて活躍することが可能である。閉塞感が漂う日本サッカー界にとって、アンダー世代からの底上げは将来への希望である。

かつて、「泣き虫」だからとつけられた”ピピ”というあだ名。スペインで大きな成長を遂げているマドリードの宝に、もはやその名はそぐわないかもしれない。